看護婦さんから質問がありました。

「なんでこうになってるの?

 みんな当たり前にやってるけど、

 実はその本当の理由なんて全然分からないんだけど。

 でも今更同じ職場の人には聞けないし・・・




なんてことありませんか?



書籍でも『いまさら聞けない○○』のシリーズって、

出れば売れる商品ですよね。



【聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥】

とは、よく言ったものです。



自分でも調べて分からないことは

素直にわかる人に聞くのが早いし正確です。



その対象となる事象があまりにも説明しにくいことって

誰もが書いての説明をしたがらないので、

どの本を探しても乗っていません。



でも、そんな情報に限って

疑問に思っている人は知りたいのですよね。





そんな同じようなことで、

ブログをやっている繋がりからですが

まだ見ぬ方から質問がありました。



血液透析に関しての話題で

ちょっと・・・いやかなりマニアックですので、



「おいおい、俺は透析の話題なんか興味ねーよ」

「マニアックだ~? なんでそんな話」

「なにそれ、長いの?」



などと思った方は、この辺りで終わりにした方が

頭痛の原因が一つ減ると思います。



「なにそれ、知りたい!」



って方だけこの先を読み進めてくださいね。



本当に面白くはないですから。





では始めます。





『はじめまして、

 いつもありがとうございます。



 いきなりメッセージ送ってしまってすみません。

 一つ教えていただきたいことがありまして…。



 透析導入時に膜面積の小さいダイアライザーから

 はじめる理由って、不均衡症候群の予防と、

 腎機能残存のほかに何か理由はありますか?



 調べてもわからなくて、

 すみませんがよろしくお願い致します。』






です。



はい、確かにこれについてキチンと言及している

書籍およびHPなどはありませんね。



これに対しての私の解答はこちら。





『○○さん



 メッセージありがとうございます。



 早速ですが、質問の解答を私なりの見解から。



 質問は

 『血液透析導入時に、ダイアライザーは

  膜面積の小さいモノを選択するけど、

  その理由は不均衡症候群の予防と、

  残腎機能の保護です。

  ほかには何かありますか?』

 でいいですかね。



 これには諸説ありますので少しずつ行きましょう。

 

ちょっと長くなりますので、

 時間のあるときにでも見てください。





 まず不均衡症候群ですが、

 これが発生する原因は体内、

 取り分け脳幹とその他の尿毒症関連物質の

 濃度差によって引き起こされます。



 濃度差によって細胞間の水分移動が起こりますね。

 物質は濃度が濃いところから薄いところへ流れて、

 濃度の均衡を保とうとしますよね、



 これが『拡散(透析)』です。



 これと同時に水分の移動が起きるのですが、

 水分は濃度が薄い方から濃度が濃い方へ流れます。



 浸透圧が低い方から高い方へと流れるのですね。



 ここ、勘違いしやすいので覚えておいてくださいね。



 つまり、物質の移動方向と、

 水分の移動方向は真逆です。



 維持血液透析患者はこの物質と水分の

 大移動を週3回行っているので、

 身体がそれに慣れています。



 しかし導入直後の患者はそんな大移動は

 今まで経験したことがありません。



 ですので、血液透析をするとまず

 素直に血液だけがキレイになります。



 時間をおいて細胞がキレイになります。



 血流速度のもっとも遅い脳幹は



 一番後回しにキレイになります。



 つまり、脳幹がキレイになるころには、

 その周りの組織などは

 充分にキレイになっているのです。



 そこから脳幹がキレイになるわけですが、

 脳幹と周りとの濃度差がこの時点で

 ものすごく大きくなっていますよね。



 そうすると、物質の移動速度も、

 水分の移動速度も速くなります。



 さきほど記載したように、

 水分は濃度が薄い方から濃い方へ移動するので

 周りの組織から脳幹に流れ込むことになりますよね。



 よって、脳幹に一気に水分が流れ込むのです。



 するとどうですか?



 水分が一気に流れ込んできた脳幹はパンパンですよね。



 脳や脳幹が腫れている状態になりますので、

 『頭痛い』や『気持ち悪い』の症状が出ます。



 これが不均衡症候群の正体です。



 つまり、透析を一気にやって

 身体がついてこなかったってことです。



 これを防ぐには透析の効率を下げることが重要です。





 具体的には、

 血液流量を少なくする

 浄化時間を短くする

 ダイアライザの性能を悪くする

 透析液流量を少なくする


 などがあります。



 よく『はじめの頃は膜面積を小さく』とか言いますが、

 私は全く同意できません。



 なぜなら、導入期はそもそもの透析条件が低いので、

 ダイアライザの大きさ云々は

 ほどんど関係ないと思っているからです。





 ちょっと考えてみてください。



 車で、軽自動車とフェラーリを思い浮かべてください。



 フェラーリが思い浮かばなかったら、

 なにか速い車でいいです。



 では両方の車が町の中を時速30kmで走ります。



 30km/hrくらいだったらどっちの車でも

 同じように走って変わりませんよね。



 では時速180km/hrではどうでしょう。



 軽自動車はたぶんそこまでは出ないでしょう。

 性能の限界ですよね。



 一方フェラーリはいとも簡単に180km/hrを突破します。



 低速であればどっちの車でもさほど変わりませんが、

 高速になれば差が歴然としてくるのです。



 透析も同様で、導入期のちょろちょろした透析では、

 ダイアライザの性能はそれほど



 気にならないといったところでしょう。



 つまり、不均衡症候群の予防としての

 ダイアライザ膜面積縮小は

 あまり意味がないものと考えます。



 (あ、やってるところは多いですよ。根拠ないですけど。)



 膜面積と言えば、体表面積と膜面積が近い方がいい

 なんて人もいますが、これもちょっと疑問です。



 透析効率の直結した項目は、

 ダイアライザの性能と血流量です。



 身体的ストレスが大きいのは血流量の方ですので、

 ダイアライザと血流量であれば血流量が優先です。



 多すぎてもいけないし、少なすぎてもいけません。



 これは日本透析医学会のまとめた統計でも出ていますよね。



 死亡率のもっとも少なかったのは

 体重あたり3.5~4.0ml/minです。



 これを優先すべきであって、

 それでも透析量が少ないのであれば

 ダイアライザの膜面積を上げたり、

 浄化時間を延ばしたりすべきだと思っています。



 なので、DryWeight35kgの老婆でも、

 適正血流量を守ってもなお透析不足なのであれば

 別に膜面積2.5㎡を使用してもいいと思っています。

 (実際、そこまでの患者はいませんけどね。)



 だって、1.0㎡と2.5㎡の充填量の違いって、

 わずか100mlちょっとですよ。







 次に残腎機能の保護ですよね。 



 これも上記とほぼ同じ内容になります。

 

 腎不全の腎臓は、導入前であればダメなりに

 頑張って機能しています。



 透析を行うと、この負担が減って、腎臓は楽になりますよね。

 

 ここで透析を行いすぎると今まで頑張っていた腎臓は

 一気にぐうたらモードへ突入し、全然頑張らなくなります。

 

 そうなると、残腎機能もあっという間になくなってしまいます。



 透析患者自身がもっとも困っているのは

 一見しては水分管理です。

 

 飲んでもおしっこが出ませんからね。

 そうなるとちょっとでもおしっこが出た方が

 体重増加を減らせるのでコントロールが楽です。



 それで残腎機能を保たせようって人が多いですよね。



 残腎機能保護の本当の目的は、

 腎臓関連のホルモン調節

 レニン-アンジオテンシン関連の調整などが行いやすいからです。



 しかし実際には完全に腎機能が退廃したところで、

 薬などでコントロールできますので

 いらないかな?という感じはします。

 

 本人の体で調節できるのが一番いいですけどね。 



 逆に、透析導入してからかなり長い期間(たとえば2年とか)

 残腎機能を維持している患者は、

 透析を行っていてもおしっこが出ていることが普通なので、

 突然おしっこが止まってしまうと、

 全然コントロールできません。



 一方、導入後すぐにおしっこが止まってしまった患者は、

 『透析がはじまった』と『おしっこが止まった』がほぼ同時期なので

 あまり苦にせずにコントロールできたりします。



 なので、残腎機能に関してもどちらが良いとは、

 一概には説明できません。







 それ以外の理由に移りましょう。 



 では、それ以外の理由ですがそれは

 『体外循環量の削減』です。



 ?って感じですかね。



 透析の回路の充填量はダイアライザを含めて

 100~300ml近くあります。



 この回路とダイアライザは生理食塩液で充填されています。

 廻し始めると、この充填液が体内に流れ込みます。



 同時に同量の血液が体外へ導かれますよね。

 血液の一部を生理食塩液に置換しているのです。



 っとここまで言ってもあまりパッとしないと思います。



 体重50kgの人の血液量は約3,800mlほどです。



 透析回路の充填量が300mlだとします。



 回路をつなげて体外循環を始めたとすると、

 血液と生理食塩液がクルッと入れ替わりますので、



 300mlの血液が体外に出て、体内血液が3,500mlになります。

 代わりに体内に生理食塩液が300ml入ります。



 ということは、一瞬血液の濃度は廻す前の約92.1%に落ち込みます。



 体外循環が安定して生理食塩液と血液がうまく混ざったあとでも

 約92.68%の濃度まで落ちたままですね。



 ここで回路が100mlだとすると、それぞれ

 約97.37%と約97.44%です。



 体外循環は血液が否応なく希釈されてしまうので、

 希釈率が低い方が身体への影響が少ないということは

 想像にたやすいことと思います。



 もちろん導入期の患者は、血液透析以前に

 体外循環自体に慣れていませんので

 その影響による反応はありますよね。



 そしてそれを軽減するには、できる限りの侵襲を小さくしたほうが

 良いということになります。





 導入期に限らず、高齢の患者、栄養状態の悪い患者、

 血液の薄い患者などはこの影響をもっと受けやすいので、

 このような患者へは膜面積の小さいダイアライザを選択します。





 ちょっと急いで書きましたので、

 抜けているところもあるかと思いますが、

 このような感じでよいでしょうか?





 もしよろしければ、他にもメールレクチャーします。

 ちょっとこれ以上はさすがに有料となってしまいますが・・・

 まずはメルマガにでも登録して頂けると、

 あとになっても確認しやすくなりますので

 いかがでしょうか?



 ⇒ http://emfrm.com/BYM/fr/0001/9TUP8M



 これからも是非ブログへお越しください。

 よろしくお願い致します。

 

 knuckle47fl』



です。



長いですよね~返信(^^;)

すみません。



話の内容をどれくらいご理解いただけたかは分かりませんが、

基本的な私の血液透析に関する考え方も

ここに入っているので、

質問された方には申し訳ありませんが

せっかくなのでシェアしようと思い

そのままブログ記事とさせて頂きました。



透析関連の記事を書くと

大抵いちゃもんつけてくる人がいますが、

やめてくださいね。



これは書籍ではありませんし、

誰かの校正を受けているものでもありません。



個人のブログです。



治療に関しても様々な考え方がありますし、

それを肯定することはもちろん、

否定することも確固たる理由というモノは存在しないので、

『絶対にそう』とか『絶対に違う』などと言うことは

断じてできませんよね。



ましてや【血液透析】なんて

見えないことをやってるわけですから。



血液検査をしてその結果から

ちゃんとできえいるかどうかを憶測しているだけです。



それをいかにキチンと解析しようかってのが、

下にある【血液透析解析】です。



過去から現在に至るまで

相当数の被検体を解析してきた私が

自信をもって行っています。



解析後の結果と患者聞き取りの結果から

その内容の整合性はかなり高いモノだと自負していますし、

私の解析結果と説明で、患者の納得率は



ほぼ100%です。



ですので、いちゃもんをつけるのであれば

他のところでやってくださいね。



かなりお門違いです。



よろしくお願いしますね。



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興味のある方はこちら



 ⇒【血液透析データ解析】




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