先の4月18日に珍しいニュースが拡散しましたね。
沖縄は浦添市の八重瀬会同仁病院で
家族間での生体腎移植で提供者である母が
手術の際に大量出血して、
手術開始から約11時間後に死亡したという事故。
⇒参考 ※沖縄タイムス
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-18_48210
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-20_48275
このニュースを受けて私が勤務する病院で
血液透析を施行している患者から何気ない質問がきました。
患者『この腎臓移植のニュースさ、大変だよね。
こういうのあると、病院も結構出すんでしょ、保障(お金ね)』
あー、患者はそういう風に受け取ってるのか。
これを受けての私の返事
私『いえ。しませんよ。』
そりゃ、質問した患者さんはちょっと驚きますわね。
患『え?なんで?お金出さないの??』
はいはい。
私『出しませんよ~、必要以上には。
だって術前にはしっかりと説明してある筈ですよ、普通は。
腎臓の受け取り者だって、提供者だって、
どっちにもリスクはあります。
そもそも、提供者の方なんて
なんにも悪いところもないのに切られるんですよ。
で、悪くもなんともない腎臓を取っちゃうんですよ。
負担が大きいのなんて当たり前じゃないですか』
患『そうか。そうだよな。』
私『そうですよ。
今は技術も進歩してかなり安全になってますけど
それでもどんな手術でも100%安全なんてないですよ。
術前の説明で【1-2%くらいの危険です】って説明されたとしても
その1-2%がたまたま自分に降りかかったら
その人にとってはそれが100%ですからね。
結果として100%危険となってしまいます。』
患『おー、たしかに
でも、移植した腎臓は動くからまだお母ちゃんも報われるか』
私『んーでも、その移植した腎臓がちゃんと機能すればいいですけど』
患『え?動かないなんてことあんの??』
私『移植ですからね。100%なんてことはありませんよ。
まあ大抵の場合は機能しますけど。』
患『そうか。薬とかは飲まなきゃいけないしな。』
私『免疫抑制剤がだいぶ良くなって、生着率、あぁえーと
移植した臓器がとれだけちゃんと移植されて
機能するかってことですけど
それも飛躍的に上がりましたよ。
でも、それでも100%じゃないですからね。
その辺までしっかりと理解してからじゃないと
移植はしちゃダメですよ。
やってみます?』
患『そうだよな~。オレはいいや~』
私『知り合いとか親戚とかで、他に透析受けてる方っています?』
患『仲間で1人いるな。親戚中ではオレだけ。
好き勝手やってたのがオレだけってことだな(笑)』
私『じゃあ良かったですね。
最近は結構気軽に移植を勧めたりするところもあるみたいですけど
きちんと説明していればいいですけどね。
下手したら、腎臓あげる人ももらう人も共倒れですよ。
移植してうまくいったと思ってて、3ヶ月でダメになって
透析再導入・・・なんてこともありますからね。』
患『なんじゃそりゃ。そんなんじゃ折角やっても意味ないな』
私『そうですよ。
だからやる側はキチンと説明しないといけないんです。
生きてる人から貰うってことは、それだけリスクが高いんです。』
患『生きてる人からと死体からだと
生きてる人からの方がいいんでしょ?』
私『そうですね。生きてる人からの方が生着率は高いです。
でもやはり100%ではないし、両方(2人)に負担がかかるでしょ。
元々腎臓は2つありますげど、あげた人は1つになちゃう。
1つでも普通の生活をしている分には問題ないですけど、
無理な生活を送るとなると、ちょっと不安ですよね。
ましてや残った1つの腎臓がそのあとずっとちゃんと
機能する保証なんてどこにもないですよね。』
患『そうだよな~。で、腎臓あげた人も残った腎臓が悪くなったら?』
私『透析になる可能性もありますね。
絶対に100%大丈夫なんてことはないですから。』
と、まあこんな感じの内容になりました。
この患者は70代の男性で、血液透析歴は5-6年くらいです。
学生時代に柔道をやっていて、威勢のいい体育会系です。
サラリーマン時代は営業で日本各地や海外へも頻繁に出向し、
かなりブイブイいわせていたみたいです。
これが祟って糖尿病になり、
そこから糖尿病性腎症⇒血液透析という経緯です。
医療はあくまでも受動的に行われるものです。
人類みな健康であれば、そもそも【医療】なんて存在しないものです。
医療行為は言ってみれば不自然な行為なのです。
怪我をしたり、病気になったりした人の自己治癒力を補助したり、
手術したり、薬を飲ませたり、点滴を入れたり・・・
もし、【医療】という概念自体がなかったとしたら、
これらをやってる人を見て、『なんて野蛮なことをしている!』
と思うことでしょう。
事実、医学の最初の一歩は、どこの国でも迫害されてきました。
今は、ある程度医学が進歩し、研究と実績が重ねられて
ある程度安全な医療の提供を行うことができますが、
根本的には【危険なことをやっている】のです。
これらのリスクをあらゆる角度から考慮し、
配慮して行っているからこそ、安全な医療があるのです。
どんな治療であっても、疑問に思ったことは
医療者に質問してみるべきです。
治療の受ける受けないを決めるのは、
あなた自身なのですから。
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コメント
シャント血流量が170ml/minしかないPtで普段はQB200mj/minとっています。でも今日はQB170ml/minで4時間透析しました。それぞれの関係と根拠をおしえてください。
よしえさん>はじめまして。
コメントありがとうございます。
返信の前にいくつか質問があります。
・よしえさんは透析患者さんですか?
・シャント血流量は、エコーなどによるシャント自体の血流量ですか?
・具体的になにを答えて欲しいですか?
以上、よろしくお願いします。
返信を心よりお待ちしております。
返信ありがとう。
私は透析看護師です。
シャント血流量とは、シャント自体の血流量のことです。
170ml/minって血流は少ないですよね。
普段の透析条件のQB200ml/minでは脱血不良をきたしてしまいます。
そこで対応としてQB170ml/minにしましたが、その根拠をおしえてください。
よしえさん>
透析医療で働いておられる看護師さんなのですね。
シャント自体の血流量が170[ml/min]というのは、ものすごく少ないです。
通常は500~1,000[ml/min]は血流量がないとシャントとしては厳しいと思います。
170しかない血流量の血管から、200を脱血しようとしても無理です。
170までしか脱血できないので、170としたのでしょうが、その患者にとって170が適正血流量かどうかと云うのはまた別の問題ですよね。
通常は3.5~4.0[ml/min/kg]が適正血流量とされていますので、その範囲に入って他の透析量パラメータも適正値に入れば問題ないと思います。
170として透析を施行した根拠は、私がそれを行ったのではないので分かりませんが、通常は上記のような考え方でよいと思います。
200を脱血しても無理な根拠がしりたいです。データはそれほど悪くないPtです。例えば、血流量が1000ml/minある人はQBいくつとれるのか、、などの根拠がしりたいです。計算式とか。。
よしえさん>
えぇっと、質問が少しわかりにくいです。
170のシャント血流から200の脱血が無理な根拠ってことでしょうか?
それでしたら、流れている血液の量以上は脱血はできないのはわかりますよね。
例えば、1000円の貯金しかないのに、2000円は下ろせないのと一緒ですよね。
ある分しか取れません。
なので、理論値上は1000のシャント血流量があれば1000の脱血は可能です。
しかし、1000の脱血を行うとなれば、それ相応の穿刺針の太さも必要になりますし、それなりの機械や回路も必要となります。
データはそれほど悪い患者ではないと書かれていますが、適正透析血流量は先の返信にも記載させていただきましたが3.5~4.0[ml/min/kg]です。つまりDryWeightが50kgの患者であれば、適正血流量は175~200[ml/min]となります。これは毎年発行されている日本透析医学会の統計データにも記載されている適正値です。
個人的には血流量は、この適正値を用いてそこからデータの善し悪しでダイアライザの種類や膜面積、また浄化時間等を変更していけば良いかと考えております。
このような解答で大丈夫でしょうか?