看護師さんから質問がありました!

今回は、たまには本職での話です。

 

興味ない人も、
『もしかしたら自分もいつかかかるかも』とか
『うちのおじいちゃんが今そんな状態なの』とかいう人も、
ちょっとくらい見てみてください。
人生のうちの0.00000001%くらいは役に立つと思いますので。
あ、いま『そんなくらいなら見なくていっか』と思いましたか?
人世80年として
29,200日、
700,800時間、
42,0480,000分、
2,522,880,000秒
のうちの1/100000000なので、だいたい25秒ぶんくらいの
価値はあると思います。
あれ?
大したことないか・・・
それはさておき、質問がありました。
『CEさん透析で使うカテーテルから輸液をいれたいって
 消化器内科の医師が言ってるんだけど、ダメだと思うんだけど
 うまく説明できなくて・・・なんでダメなの?』 

はい。
ありがちな状況ですね。
この看護師さんは、長年CCU(心臓の集中治療室)で勤務して
この春に消化器内科へ移動となった看護師さんです。
で、透析の予備知識として透析用のカテーテルでは
基本的には輸液は入れてはいけないことを知っています。
でも、それをよく分かってない医師へ進言すると、
医師もアホなので『なんで!』と看護師に喰って掛かると。
看護師はそこまで細かくは説明できずに困る。
こんな状況ですね。
早速解説していきます。
透析(血液透析)などの血液浄化を行う際には
血液を持続的に大量に体外へ導き出して、
血液を綺麗にした後、さらにそれを戻さなくてはなりません。
当然ながら、大量の血液を体外で循環させなくてはならないので
普通の静脈に針を刺しても、血液浄化では使いモノになりまえん。
そこで、血液透析患者の大半は【シャント】というモノを
手術して造っています。
その他の血液浄化を行う患者は、一時的な浄化治療ですので、
わざわざシャントは作成しません。
手術ですからね。
ではどうするか? というと、
首や足の付け根から、大静脈に直径5mmくらいの太い管を入れます。
これが『カテーテル』です。
カテーテルには一般的に
『緊急時一時的ブラッドアクセスカテーテル』
『恒久的ブラッドアクセスカテーテル』との2種類があります。
この場合で使用するカテーテルは一時的治療に使用するので
『緊急時一時的カテーテル』ですね。
このカテーテルは針のように刺して固定しているだけですので、
不要になったらすぐに抜いたり、交換したりできます。
これに対して『恒久的ブラッドアクセスカテーテル』はその名の通りずっと使うモノなので
簡単には抜けないように皮膚のしたでしっかりと固定します。
ずっとと言っても、10年も20年も持つものではないので、
数年置きに交換が必要となりますが。
ここで、本題です。
通常、口からうまく栄養が取れなくなった患者には、
同じように管を大静脈に入れてそこから点滴で栄養補充します。
一般的には『CVカテーテル』などと呼ばれるものです。
これは点滴を入れるためのものなので、
太さとしても2,3mm程度のモノです。
点滴は1時間当たり20mlとか100mlとかの速度で入れます。
これに対して血液浄化では1分間80mlとか200mlとかの速度で
血液を循環させます。
1時間あたりに換算すれば4800mlとか12000mlとかになりますよね。
単純に点滴速度の60~240倍です。
それだけの流量が必要なので当然
血液浄化で使用するカテーテルの太さは太くなります。
つまり、【大量の液体を流すために太い】のであって、
【低流量での流れは使用範囲外】なのです。
川の流れをみても小さい川と大きい川では、
大きい川の方が場所によって流れのムラがありますよね。
これと同じように太い管の方が流れにムラがあります。
もともとムラがある管の中をゆっくりと流れていたら
それこそ滞留する箇所があっても不思議ではありません。
細い管であれば、滞留する隙間もないのです。
なので、太い血液浄化用のカテーテルで普通の点滴を行うことで
わざわざ管の中で滞留させて詰まる原因を作っているようなモノなのです。
太い静脈に管を入れる行為自体、患者にとって危険性を伴います。
カテーテルが詰まったらカテーテルは交換するしかありません。
血液浄化用のカテーテルから点滴を入れることは
そんな状態にあえてしているのです。
ナンセンスとしか言いようがありませんよね。
また、血液浄化用のカテーテルはあくまで血液浄化用のカテーテルです。
一般的な点滴用カテーテルなどには通常施されているような
環境ホルモン対策などの処置は最近になって行われてきました。
栄養点滴は、脂肪成分なども含まれていますので、
この脂肪成分などによって偽環境ホルモンである【DOP】などが
漏出してきてしまう恐れはゼロではありません。
いろいろな観点から、血液浄化用のカテーテルは
点滴には向いていないのです。
ということで、『緊急時一時的ブラッドアクセスカテーテル』にしろ
『恒久的ブラッドアクセスカテーテル』にしろ
血液浄化用のカテーテルでの点滴はオススメしません。

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